自分では気づけない 歯ぎしりが原因で歯の治療が増えるケースとは
(歯科医師 丸茂和弘先生の記事より抜粋)頻繁に歯ぎしりする癖があると、その衝撃で歯の表面にヒビが入りやすくなります。場所によっては、歯の表面を自己修復する「再石灰化」が間に合わなくなり、歯の根元がえぐれるように削れてきたり、歯の先端が一部欠けたり、歯と歯の間に虫歯ができやすくなったりすることがあります。
同様に差し歯の表面の樹脂やセラミックなども、長期間歯ぎしりのような衝撃を受けると、少しずつダメージを受けます。樹脂では金属との境目から白い部分が大きく剥がれる、セラミックであれば大きな剥離はなく、一部が欠ける程度が多いようです。
樹脂とセラミックの耐久性では、特殊な場合を除いて色の変色などを含め、セラミックの方が耐久性が高い傾向にあります。
■すでに前歯に差し歯が数本ある
犬歯間の3本以上が被せものになっている場合、歯ぎしりの影響を強く受けている可能性があります。特に奥歯は歯の治療があまりないのに、前歯にだけ被せものが多い場合は、歯ぎしりによる歯の破壊が起きているかもしれません。
■歯周病はないが歯ぎしりがある
歯周病で歯ぎしりの癖があれば、歯周病が進行して、欠ける前に歯がグラグラしてきます。健康な歯ぐきの状態で、特に前歯を前後に擦り合わせる癖がある場合は、前歯の差し歯を破損しやすくなります。
■被せもので歯並びを修正した
被せものをする際に歯並びの悪い箇所を被せもので修正した場合、歯ぎしりを無視して、見た目重視の形にすることで、あたる部分の衝撃が増えてしまいます。差し歯が歯ぎしりによって被せものをする前の形になるまで、壊し続けてしまうこともあります。
■以前歯が欠けたことがある
歯が欠けたり、以前にもトラブルを起こしたことがある場合、噛み合わせが欠けた部分に強くぶつかってしまうため、そのまま形を元に戻すと同じ様に壊れることがあります。
残念ながら、歯にダメージを与える歯ぎしり自体の治療法は、現時点ではありません。そのため、歯ぎしりをしてしまっても歯を破損せずに済むようなマウスピース「スプリント」を歯科医院で作り、就寝中だけ口の中にはめておく方法をとることになります。これによって、歯ぎしりによる歯の破壊を防止することができます。
プレートを使用しない一般的な対処法として、以下のような方法があります。
▼1. 前歯を短く設定する
▼2. 一度欠けたら同じ形は望まない
差し歯が欠けた場合、もしかしたら歯の根が折れて抜歯になっていたかも知れません。運良く欠けただけで済んだと思って、見た目が悪くても噛み合わせ優先の形に変更します。
▼3. 定期的に噛み合わせの調整を行なう
歯ぎしり破壊が起きないように被せものを設定しても、歯ぎしりが被せもの以外の歯を摩耗させます。半年~1年で定期的に噛み合わせの調整を行うと、歯ぎしり破壊の予防になります。
噛み合わせ優先の形は、歯の位置や上下の歯のバランスなどで決まるため、一般的には見た目がそれほど綺麗に見えないことが多いようです。ただし上下の歯を数多く一度に修正して、噛み合わせと見た目のバランスを修正できることもあるので、病院でよく相談するようにしましょう。