口腔細菌が大腸がんの発生に関与している可能性を発見
鹿児島大学は9月21日、口腔細菌が大腸がんの発生に関与している可能性を発見したと発表した。
今回の研究によって、4種類の口腔常在菌が大腸がんに関与していることが判明。これは世界で初めての発見という。今後は、唾液検査によって大腸がんの発見やリスクの検知ができる可能性、口腔細菌の管理によって大腸がんを予防できる可能性が明示された。
結腸直腸がん(以下、CRC)の発生率は近年増加している。そして現在、腸内細菌叢はCRCの進行に関与していると考えられている。
また、最近の研究では、唾液と糞便のサンプルを使用して、CRCの発生における口腔細菌叢の関与が調査されている。
今回の研究で、CRC患者は健常者よりも、大腸がんへの関与する4種類の口腔内細菌、Peptostreptococcus. Stomatis、Streptococcus. Anginosus、Streptococcus. Koreensis、Solobacterium. Moorei の口腔細菌が有意に多く存在することが明らかになった。その中でも、Solobacterium. Moorei は、CRC初期段階群と進行段階群においても有意に多く存在。CRCの進行にも影響を与える可能性が示唆された。
今後、同研究グループは、唾液検査による大腸がんやリスクの診断方法の開発を進めていくとのこと。
また、歯科治療や口腔ケアなどの歯科的介入や、食事による口腔細菌叢の管理によって、大腸細菌叢をコントロールできる可能性や、大腸がんを予防する方法についても研究をすすめていく方針という。
Peptostreptococcus属やStreptococcus属といったレンサ球菌属は、初期プラークの形成に関わり、歯肉縁上プラークに多くみられる。Solobacterium属においては、酸素のある環境では生育できない偏性嫌気性であるため、他の菌種よりも病原性は高くなると考えられる。
しかし、今回の研究で P. gingivalis のような病原性の高い細菌が発見されなかったということは、歯肉縁上における炎症のコントロールを行う口腔ケアこそが、大腸がんの発生や進行にとって重要であると考えられる。